西山靴研究所の安位です。
当店Blogをご覧いただきありがとうございます。
本日のお題は、「セメント製法」の良さを見直したので、「マッケイ製法」と比較してみたいと思います。
先ずは、マッケイ製法の特徴
マッケイ製法は、シンプルな構造です。
①返りが良いので履き心地が柔らか
マッケイ製法で作られた靴の最大の特徴(良い点)は、履き心地の柔らかさです。
ウェルトがアッパー(本体)に縫われてなく、中物とよばれる練りコルクなどの緩衝材が最小限なため、ソールが反りやすく、歩いたときに靴が足についてくるような感覚があります。もともとは、貴族がお城の中で室内履きとして履いていた靴から派生した製法と言われています。
②細身で繊細な仕上がりが可能
マッケイ製法で作られた靴のもう一つの良い点は、繊細な見た目に仕上がるということです。
繊細な見た目が生まれる理由は、コバ(ソールの側面に出ている部分)の張り出しが最小限で済むためです。
別の主流な製法である「グッドイヤー・ウェルト製法」は、コバに縫い目をつける必要があるため、構造上どうしてもコバが張り出している必要があります。コバを細くして、見た目を細く見せようとしても、縫い目までしかコバを削ることができません。
③オールソール修理が可能
マッケイ製法で作られた靴のもう一つの良い点は、オールソール修理が可能です。
中底とソールが縫われており、縫い糸を切ることで、ソールをはがすことが可能なためです。1950年ごろまでは、接着技術が低かったこともあり、底がはがれることを防ぐため縫うことが必要だったのです。
マッケイ製法とセメント製法の違いは縫いだけ
と、ここまでマッケイ製法の良いところをご案内いたしました。
セメント製法もマッケイとほとんど同じ良さがあります。
①返りが良いので履き心地が柔らか
②細身で繊細な仕上がりが可能
③オールソール修理が可能
よくセメント製法で勘違いされているのが、「オールソール修理」ができないと一般的には考えられているようです。しかし、実際は、今の接着技術・はがす技術ならば、セメント製法の靴もオールソール修理することができます。マッケイ製法の場合、縫い目から水が入る可能性があることや、オールソールの際に縫い糸をすべてカットし、縫い糸を取り外す作業が必要になりますが、セメント製法の場合、熱を加えることでソールをはがすことが比較的簡単にできます。
もともと安価な大量生産靴の製法として発展したセメント製法ですが、現在では、接着技術、プライマー技術が優れており接着だけでソールがはがれることは極めて「まれ」です。底を縫う工程も一つなくなり、現代に合う製法といえるのではないでしょうか。
当然コストにも反映されるので、生産者・購入者ともによいのではないかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。